まず卵管を取ってしまったり、卵管が詰まっている人は体外受精をすべきだ。
また、旦那さんの精子が極端に少ない場合も精子を1匹ずつ卵子に入れていく顕微授精という道があるよ。

そして、治療費を払ってでも早く妊娠したい人も体外受精の適応に入る。
なぜなら、いままで妊娠できなかった理由がカラダのどこかにあるからね。
原因究明に時間を費やすより、現代医療の力を借りてしまおう。
1日でも早く赤ちゃんと出会えたほうが幸せでしよ?

また体外受精の成功率は胚培養士にかかってると言っても過言ではないよ。
なぜならほぼすべての工程を胚培養土がおこなうからね。
こう言うと、たくさん広告を出していたり、有名なドクターのいる病院がよさ
そうに思える。

でも、大きな病院だから優秀な人材がたくさんいるとはかぎらないから。
広告の大きさや医者の知名度は関係ない。
体外受精の病院選びは培養室選びだと考えるといいよ。

じゃあ、よい培養室をどう選べばいいのか?

よい培養室選びとは、よい胚培養士選びにほかならないんだ。
技術力を基準にすると、見分け方のポイントは2つある。

無刺激あるいは低刺激による採卵を実施している病院

体外受精をやる前には、ホルモン剤で卵胞を刺激して卵子の数を増やすことが多い。たくさん採卵できたほうが、培養して育つ確率が高くなると思われているからね。

でもどのような治療段階でも、ホルモン剤の使用は控えたいわけだ。
病院によっては、母体への負担を考えてホルモン剤を使用しない無刺激、もしくは使用しても少舅の低刺激で体外受精をおこなっている。この方法を採用できる病院は、よい胚培養士がいて、1個〜2個の採卵でも培薑できる実力があるってことになる。

急速凍結法を導入している病院

間き慣れない言葉かもしれないけど、ステップアップ治療の最終段階に位置し
ているのが凍結胚移植だ。
体外受精では、受精させた卵をすべて子宮に戻すわけじゃないんだ。必要に応
ちつそ
じて受精卵を凍結することがある。液体窒素で凍結させて、保存しておけば、次
の生理周期や2人目の赤ちゃんが欲しいときに使用できるよね。
そのために凍結させる方法は、かかる時間によって大きく2つに分かれる。機械を使ってゆっくりおこなうのが緩慢凍結法。
胚培養士がすばやくおこなうのが急速凍結法。
これまでは緩慢凍結法が主流だったんだけど、急速凍結法が開発されてから、解凍後の回復率もほぼ100パーセントと格段に上がったんだ。
ただ、これには卵を扱う感覚がよくて手先が器用な胚培養士が必要なんだ。
導入していない病院も結構たくさんある。

ということで、無刺激法(低刺激法)と急速凍結法の2つを押さえている病院
はよい培養室をもっていると言える。
どれか一方だけでなく、両方がポイントね。
それから言うまでもなくステップアップ治療を実施していない病院だよ。
あっ、ポイントが3つになっちゃったね。

あまりの情報量に時間が経つのも忘れてノートを取っていた。
気がつけば、すっかり日が沈んでいる。
でも、不思議と疲れは感じていない。
明日はいよいよ実践編かと思うと、わくわくしてくる。

「だいぶ時間がオーバーしちゃったね。最後にいちばん大事なことを伝えるよ」
ペンを握る手にも力が入る。
聞き逃すまいと動きを止めて、コウ先生の言葉を待った。
「不妊治療でもっとも難しいのは着床後、つまり妊娠の継続なんだ」
どういうことかしら?
わたしは体外受精4回のうち3回は受精しなかったのに。
「あきさんが体外受精で受精反応があったのは一度だけだったよね?」
「はい、そうです」
「きっと治療が長引くにつれて、卵子が劣化しているんだろうね」
卵子の劣化
聞いたことのない言葉に混乱した。
老化ではなくて?
岩先生はニコニコしながら卵の絵を描き始めた。

「生卵をよ〜く見ると、黄身の中に白いものがある。それがニワトリの卵子だ」
「白いひもみたいなやつですか?」
「それはカラザっていう、黄身と卵白をつなげるものだね。卵子は黄身の表面にある
1ミリくらいの白い点だ。それ以外は卵子のための栄養なんだ」

「そんな小さなものが分裂してひよこになるんですね」
「そういうこと。人間も卵子が分裂して着床するまでには莫大な栄養が必要になるん
だ。では質問だけど、栄養はどうやって運ばれてくる?」
「血液を流れてきます」
「正解。細胞は血液、リンパ液(血管からにじみ出た血液)、組織液といった体液に
よって運ばれてきた栄養素を取り入れる。卵子も細胞のひとつだょね。同じように栄
養素を受け取り、老廃物を排出している」
「それと劣化がどう関係するのでしょうか?」
「もし体液がよどんでいたら?」
今度は川のような絵を描いた。